「親密さ」への道程

⑤人間関係・コミュニケーション CSNチャンネル

「親密さ」というのは、エリックバーンが「時間の構造化」で挙げている6様式のうちの一つである。
「人は常に社交的な交流行動で時間を構造化して生きている」とバーンは言う。
その行動には「4つの基本的な種類」と「2つの限定的なケース」がある。前者は挨拶などの
「儀礼」、多くは雑談に費やされる「暇つぶし」、仕事などの「活動」、そして裏のある、後味の悪い
「心理ゲーム」と呼ばれるやり取り、後者は自分の内への「引きこもり」と、心理ゲームを超えた
ところでの交流とされる「親密さ」、である。

「TA TODAY」では、グループワークの場面を想定しながら、この6様式について説明している。
いわゆる非構成のエンカウンター・グループである。全くお互いに見知らぬ12人が、何の計画も
目的もないグループに参加している。「私」はその中の一人である。

 最初は皆押し黙って自分の中に閉じこもる。かなりの時を経てその中の誰かが口を開く。
「こんな風に黙っていてもしょうがないから自己紹介でもしませんか?」
皆は救われたように話し始める。一通り無難な話をしてからは、少しずつ「何かもう少し充実した
ワークをしよう」という機運が高まってくる。何をするかについて皆で話し合おうということになる。
メンバーの一人が記録係をかって出る。

 思い思いの提案が出て記録係のAがそれぞれを読み上げ、皆に挙手を促す。するとBが「そんな
やり方は自由な判断を縛るんじゃないか?」と異議を唱える。「多数決に従うのが民主主義だ」とA。
「民主主義だって?君の言ってることは俺を混乱させるだけだ」とBは尊大に言い返す。
Aは「僕はこれ以上できないよ。ワークを台無しにしてごめん」と皆に謝罪した。
AとBは明らかに皆の前で「心理ゲーム」を演じたのだ。

 このやり取りを聞きながら「私」は猛然とBに怒りを覚える。
それを押さえつけずに彼に向って身を乗り出し、厳しい声でその怒りを表現する。
「僕は君に腹を立てている。自分が考えたことをきちんと実行してみせろよ」。
「俺だって怒ってる!」と、顔を真っ赤にしてBが言う。「君がそんな風に怒鳴らなければ俺だって
考えられるんだ」。このとき2人は「親密さ」の中にあった、と「TA TODAY」は示唆している。

 バーンは「親密さ」とは「率直で心理ゲームのない関係、相互の自由な授受であって、利己的な利用
のない関係」だと言っている。また、「一方的であることもある」とも指摘している。一方がいかに
率直でも受ける側にその準備がなければ成り立たない。

「TA TODAY」は、「親密さ」とは、心地よいものとは限らない、とも言う。その中でのストローク
は、他のどの時間の構造化の形式よりも強烈で、「値引き」のない真の要求と感情の交換だと定義
している。心地よい情緒的な関係がしばしば「心理ゲーム」の上に成り立っているということも
あり得るからだ。

 コロナ禍では「ソーシャルディスタンス」という言葉がよく使われた。それは、物理的な距離だけで
なく、心理的な距離にも適用され、徐々に居心地のよいものとして認識されつつある。相手を深く
知ろうとすることを避け、胸中をさらけ出すことなく、お互いに程よいところでゆるくつながり合う。
傷つけあわずに踏み込みすぎずにそこそこ楽しい。それを「親密さ」と感じる向きもあるだろう。
バーンが提示した「親密さ」で時間を構造化するのは、かなり稀有なことになってしまうのかも
しれない。(K.S)

 ※文中の交流分析用語に関しては、「交流分析について」をご参照ください。

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