演劇とカウンセリング

 第1期目を多くの収穫とともに先月終了した「キャリアサポーター養成講座」は、今月から修了生を対象とした「実習コース」を開講します。そのプレ講座として10日(土)に「パフォーマンス実習」を行いました。
060610cs01.gif 基礎コースでは、カウンセリングの諸理論やCRP(カウンセリングロールプレイ)が中心でしたが、実習コースではそれに加えて「魅力あるグループファシリテーション」のスキル実習にも重点をおきます。その一環として演劇的トレーニングを導入し、グループの様子を見ながら自在に動けるファシリテーターの養成につなげたいと思っています。
060610cs03.gif まずは軽いストレッチで身体をほぐし、腹式呼吸と発声の練習から。通る声と滑舌の良さはファシリテーターには必須のものです。そこで早口言葉にも挑戦してもらいました。
060610cs06.gif060610cs08.gif  次にエチュードという演劇トレーニングを行いました。設定を自由に決め全てをアドリブで進めていく即興劇です。最初は二人一組で、何パターンか行い、最後にはあらかじめストーリーを組み立てて全員が参加して演じました。
 慣れない訓練に受講生の面々は四苦八苦。しかし初めてやってみて「とても楽しかった」という感想が口々に聞かれました。
 学生時代に演劇をやっていたせいか、私は演劇とグループワークにはかなり通ずるものがあると思っています。「ドラマセラピー」や「サイコドラマ」など演劇的要素を使ったグループワークも多く、「演じる」ことで気づくことや吹っ切れることは結構あります。それに「カウンセリング」そのものが「演じる」ということでもあると私は思っています。
 「演じる」という言葉は、「真実を隠したり取り繕う」というような意味合いで使われることが多いのですが、本当に「演じる」というのはそんな生やさしいものではありません。それは少しでも演劇をかじったことのある人なら痛感するところだと思います。プロの役者はいわば「命がけで」演じているし、何をどう演じようとそれを演じている自分はなくなりはしません。
 いつもカウンセリングルームは私の舞台です。「全存在をかけて」私はそこにいます。主役はクライアントさんです。私は共演者であり演出家であり舞台監督です。1時間の舞台は決してやり直しはききません。観客も自分自身です。冷静に舞台を見つめる目を要求されます。
 グループは「みんなで作り上げていくもの」ということではより演劇に近い感じがあります。ファシリテーターは時には演出家になり、役者になり、そして黒子にもなります。これらの術を自在に使える人材が育つことを願って、今後もこうした「演劇的トレーニング」を続けていくことを企画しています。

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