先週の日経新聞の読書欄で、ベストセラー第一位に
なっていたのが、勝間和代という人の「断る力」という本です。
実は私はこの著者のことを知らなかったのですが、
カウンセラー仲間のみよみよから教えてもらいました。
みよみよは同じ著者の「起きていることはすべて正しい」と
いう本を読んでいました。彼女は「断る力」の方も読んだと
言っていました。別にみよみよが勝間さんのファンというわけ
ではなく、これらの本のベースになっているのが、彼女の
専門フィールドである「アサーティブ」なんだそうです。
確かに「断る力」なんてタイトルが、アサーティブそのまま
ですね。
勝間さんというのはメディアへの露出度が高いらしく、その
せいか思わぬところで「アサーティブ」がブームになっている
らしいです。「何にしても話題になっているのはありがたい」と
みよみよは言っていましたが、まあそうですよね。
そこで私も上記の2冊を手に入れて読んでみました。
中身は他のハウツー本とそれほど違いはありませんが、
「アサーティブ」という心理学の理論を持ってきたところが、
みそと言えばみそですかね。
ところで、この2冊の本、どちらも表紙に著者の写真が
使われています。意志の強さを誇示するような表情の
顔のアップで、インパクトがあります。A子さんの言うには、
「本の内容よりも、著者の名前で売れているんだと思う」
とのことで、多分女性の人気が高いのだと思われます。
著者の「キャリアを邁進し、成功させている強さ」に
憧憬を抱くのでしょうか。
著者の「人となり」は本だけでは分かりませんが、確かに
ミリオンセラーを産み出し、書くものを次々とヒットさせて、
「断る力をつけるには、断れる実力を身につけることが必須」
と言い切る自信と、ちょっとやそっとの困難にもめげず臆せず
突進していく行動力には驚嘆するものがあります。
こういう人がブレイクするというのは、翻ってみれば、
それだけ自分の「弱さ」に悩む女性が多いということ
なのかもしれませんね。女性たちに「ああなりたい」と
思わせる何かが彼女にあるのでしょう。
「上野千鶴子のようになりたい」という女性はあまり
見かけませんものね。
勝間さんは「男女平等参画」にも熱心なようですが、
彼女が著書のなかで賞賛しつつ紹介している和田裕美氏と
ともに、今の女性のヒーローが、学者ではなく、民間の
経済畑から生れているということも、なかなか示唆的です。
さて、この勝間さんの2冊の本をCSNの男性陣に見せた
ところ、「こんな表紙の本は読みたくない」と概ね不評でした。
「断る力」の表紙には、カッと目を見開いて片手をこちらに
突き出している著者の写真がありますが、当CSN理事の
O氏曰く、「こんなすごい表情をする女性には、もう顔を見た
だけでアレルギーがある」。はあ、そうですか。
「自分が守ってやらなければくずおれそうなか弱さ」を
女性に求めるのは、今も昔も男の本音なのでしょうか。
まあ、今は「守ってもらいたい」男たちも増えているようでは
ありますが、その頭には「母のように優しく」とかいう
「枕詞」がついたりする。こういう男たちは、結局いつまで
たってもパートナーを見つけあぐねているみたいですね。
女性にしても、アサーティブをやっただけでは、とても
勝間さんのようにはなれませんから、結局は本を買った
大多数が「自分はこうはなれない」と諦めてしまうのかも
しれません。とどのつまりは、「やはり強い男に守って
もらいたい」という願望は捨てきれずに、それなら男の
望むとおり「弱い女」でいる方がいいようにも思え、
両極を揺れ動くことになってしまうんじゃないでしょうか。
としてみると、ベストセラーというのは、「メディアの喧伝に
載せられて本を買ってはみたけれど、その通りには行動
できない」絶対多数に支えられているのだとも言えます。
結局は、「強い女」も「強い男」も幻想の中にしか存在しない
ということなのかもしれません。
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