今年の初めに引っ越しをして、あれこれ追われているうちに1年が経とうとしている。
クライエントさんや関わりのある方々への通知、関係諸機関への届け出、HPやさまざまな登録先の情報変更等、雨上がりのボウフラのように湧いてくる諸作業に対応しいしい、
事務VTのCちゃんの大いなる助力を恃みに年の暮れまで突っ走った。
そしてはたと気がつけば、SNSの更新は殆どせずじまい、ブログの一つも書いてない。
全ては引っ越しを言い訳にした己の怠慢のなせる業。
だけどこんなことでは年が明けない。
いや、どんなことでも年は明けるのだが、何か晴れ晴れしない。
そこで、こんなに押し詰まってからの一念発起、今年最初で最後のブログをとにかく書こうと思い立った。
年の暮れだろうと何だろうと、思い立ったが吉日なのさ。
さて、200個もの段ボールと格闘した家と物の引っ越しは何とか済んで、片づけもあらかた終わり、
カウンセリングルームも恙なく作動している。
とりあえずはノープロブレム。
じゃ、何がプロブレムなのか。
そりゃやはり、人とココロの引っ越しはどうなのよ、というところに尽きる。
これまで取り組んできたテーマは、引っ越してどうなったのか?
新たな場所での活動は、’私’という主体にいかなる変化をもたらしたのか?
今、それが明らかになりつつある。
それは、一冊の本との出会いによってもたらされた。
だが、その本との出会いは、あるクライエントさんの苦悩に導かれたものだった。
その苦しみは私を深い内面への旅へと誘い、心理士仲間との会話や友人の感性への共感に彩られ、
粛々と熟成していった…ようなのだった。
先日の今年最後のTA講座で、来年から皆と一緒に読みたい本を提案した。
精神科医の高橋克己先生が書かれた『人は変われる』である。
エリクソンをはじめとした、幼児期から自我同一性を獲得する青年期への発達論はあまたあるが、
それでは「成人後、人は発達するのか」というのがこの本のテーマである。
えーー、何十年来つき合ってきたエリックバーンとはしばしのお別れ…?
いえ、別に別れるわけじゃない。
バーンのゲームと脚本の理論にはどれだけ助けられたか分からない。
講座の面々の進歩も著しい。
しかし、密度の濃い難しいケースは、その先への亢進を促す。
道を探して立ちすくんだ私に、その本が標を差し出してくれたのだった。
こころには3つの能力があると先生はおっしゃる。
曰く「自分から離れることのできる能力」「絶望する能力」「純粋性を感じることができる能力」である。
また、こころには階層があるともおっしゃる。
浅い順から、感覚、欲求、知性、感性、そして主観性(自我)である。
曰く、「この5つの層はヒエラルキーを形成し、浅い層は深い層の土台となり、深い層は浅い層を取り込んで
自由にコントロールできる」のだ。
そして、ヒエラルキーの最も深いところに「主観性」の層があり、人はこの層をはっきりと感じられる
ようになったとき、絶望を越えて解放される。
そのようにして「人は変われる」のである。
来年のTA講座では、メンバーとともに、この「主観性を取り戻す」こころの旅に出てみようと思う。
必ずやTAの「脚本からの脱出」が実感でき、バーンとの新たな関係が感じられる筈だと信じて。