行間の妙

 先週末に千葉の労働者福祉センターで開催された
「神田橋條冶 精神療法セミナー」に、男Nとともに
行って参りました。
 先生のご尊顔を拝したのは2年ぶり。所も同じこのセンターで、
ブログ(こちら)にも書いておりますが、今回はあの独特の
神田橋節、前回にも増して冴えておられた感がありました。
 あらかじめ参加者から収集した質問に答えるという形式は
前回と変わらなかったのですが、今回は、同類の質問をまとめ、
一貫したテーマを持つように構成されていました。
 そのテーマというのが何と「発達障害」。このところCSNが
取り組んでいるのと同じだったので、あまりのタイミングの良さに
男Nと顔を見合わせ、にんまりしてしまいましたが、それほど
悩んでいる人が多いということでしょう。
 さて話の内容はというと、「高機能自閉症」と呼ばれる一連の
症状は、シナプスという脳神経系器官の障害で、認知の統合が
できないことによって引き起こされるということ、その特質は、非常に
不器用でこだわりが強いこと、それを和らげるには「ハルウコン」、
「DHAEPA」が効くということ、障害を確認するには赤白の旗を
上げ下げする遊びをしてみればすぐに分かること、フリースクール
に通っている児童の大半は発達障害であること、だからスクール
では、上記の旗遊びの他、ジャンケン、せっせっせ、縄跳び、お手玉
といったような遊びを入れて訓練するのがいいこと、様々な情報の
入力と出力の統合機能がうまくいかないのが「統合失調症」だが、
その機能が全くない「統合無能症」ともいうべき疾患であること、
共感性が抑止されているものをはずしていくのがカウンセリング
なので、それが始めからないこの障害には全く役に立たないこと、
etc、etc・・・でした。
 こう書くと、内容としてはそれ程目新しいこともないようなのですが、
これをあの独特の口調で言われると、何か+アルファが漂い、それが
じわっと胸にしみるような感じがあるのですね。「行間に味がある」
とでも言いましょうか。そしてまた、その味わいが非常に濃密なんですね。
 例えば、「カンファレンスなどで思い切って発言するのだけれど、
自分の思っていることをうまく発言できない」という質問に答えて、
「思い切って話すと、その切られた思いの方に心が残るのね。
真実はいつも切られた思いの中にある。何回もそうして発言
しているうちに、それが見えてくるようになって、言葉の領域に
持ってこられるようになる。そうなるまで発言し続ければいいのね」
といった具合。
 その他、「人間観で援助のし方が変わるか」という質問には、
「言葉で表現できる人間観は行動に枠をはめるのね」と前置き
した上で、「質問自体をパラドックスにしてみるといい、そして
二つの間を揺れ動いてみる。パラドックスは言葉によって言葉を
越えるのね」と仰せられた後で、「臨床家には言葉によってはっきり
とさせないでいる能力が大事。葛藤能力を育てないとだめね」と
印象深いお言葉。
 「臨床家と素の自分の区別がつかなくなった」という質問には、
「仕事を極めていけばいくほどそうなるのね。例えば竹職人は、
ずっとその仕事を続けているうちに、その人の人間性に竹職人が
入り、竹職人に人間性が入ってくるというようにね」などとおっしゃる。
 会場で2年前にもここで会ったサンプラ時代のクライエントの
Kさんにまた出会いました。聞けば毎年来ているとのこと。彼が
はまるのも分かるような気がしました。
 本人を見る前から風評だけで物まねをしていた男Nも、すっかり
神田橋節に魅せられたようでした。心なしか物まねにも深みが
出てきたような…。
 因みに先生が「発達障害近縁圏に多くの学生たちがいて、
社会に出るのが不安で大学院まで行ったりして、その後
行き場がなくて引きこもっちゃう」という話をされたとき、男Nが
「俺のことじゃん」って呟いてました。それで早速食事に入った
店で、割り箸とマドラーを使って「赤上げて・・・」をやってみました。
それはめでたくクリアできた男N。その勢いで「引きこもり」の方も
クリアしてね。
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