「筋金」のルーツ

 今日から12月。人も街も慌しくなる季節ですね。
世の中の勢いも停滞気味で、学生の就活では内定や
内々定の取り消しが相次いでいるらしい。
それに何だか今年は11月のうちから結構寒い日が多い。
こういう年の暮れは、「師走の風が身にしみる」実感が
一段と強まります。
 この寒風は、いわゆる「社会的弱者」と呼ばれる人々に
ひときわ激しく吹き荒れる感じですね。辛く厳しい年末を
過ごす人も沢山いることと思います。特にホームレスの
人たちにとっては、生存の危機に晒される日々が続く時期
でもあります。
 昨日の日経新聞で「社会人」という欄に、長年ホームレスの
支援を続けてきた生田武志氏の記事が載っていました。
以前、氏の著書である「ルポ最底辺」(ちくま新書)を、「何と
世の中にはすごい人がいるもんだ」と感嘆しながら読んだので、
「あ、あの人」とすぐ分かりました。
 生田氏は1964年生まれの44歳。記事によると、「何一つ
不自由のない家庭で育ち、学生時代はバンド活動に没頭し、
夢はピアニスト」という恵まれた境遇の学生だったらしい。
それがTVで見た一本のドキュメンタリー番組に触発されて、
釜ヶ崎のあいりん地区に足を踏み入れ支援活動を開始する。
そして3ヶ月目に釜ヶ崎キリスト教協友会主催の「労働セミナー」
に参加し、そこで日雇労働を初めて体験したのをきっかけに、
長期の日雇労働をすることを決意。外側からのボランティアと
してではなく、一緒に働いて生活費を稼ぎドヤに泊まる生活を
することでより深く釜ヶ崎に関わろうとするのです。
 「ルポ─」にはその後の過酷な労働の様子や、手配業者の
あくどいやりくち、行政や警察の強圧的態度などが、一労働者
としての視点から仔細に書かれていて、その凄まじい状況に
息を呑むような衝撃を受けました。
 世の中にはこうした筋金入りの「支援者」というのが
いるもんなんですね。福生の自立支援センターの工藤定次氏も
その一人だと思いますが、こういう人に出くわすと、その筋金の
ルーツは一体何なんだろうとつい思い巡らしてしまいます。
工藤氏は先日読んだ「親と離れて『ひと』となる」(NHK出版)
という本の中で、元バリバリの全共闘の闘士だったことが
明かされていて、「な~るほど」と思いましたが、それなら
彼より若い世代の生田氏や、先日の「訪問支援員」の講義で
講師を務めた30代の谷口氏(こちらを参照)なんかはどうなんだ??
いやでも興味がそそられてしまいます。
 前述の「親と離れて『ひと』となる」にも、何人かの
こうした「支援者」が登場します。富山で自立支援の
共同生活寮「はぐれ雲」を運営する川又直氏、今
毎週日経で特集が組まれている奈良県の自立塾
<NOLA>の代表佐藤透氏など、いずれも「身を賭して」
という言葉がふさわしい活動振りが紹介されています。
 もしかしたらこういう人たちには生まれながらに
「筋金のもと」みたいなものが仕込まれているのかも
しれませんね。芸術家のなかにもそういう人は見受け
られます。俗世の欲求を全て一点に向かって「昇華」
させるようなエネルギーが資質として備わっている。
それが何かのきっかけで方向性を見出すと、一気に
道を得て流出するのでしょうか。
 私とて「支援者」を名乗るからには幾らかでも彼らの
行動力を範としたいと思います。思いますが、やはり
できないものはできない。無理をすると私にも備わって
いるかもしれない「筋金のもと」が、十分に育たないうちに
潰れてしまいかねません。自分にどれほどのことが
できるのかを見定めて行動するのもまた、「支援者」の
資質のうちと言えます。私はあくまで私らしく、「かなりん流支援」
の円熟を目指したいと思っています。
blogranking.gif
ブログランキング・にほんブログ村へ
↑ブログを読んだらクリックしてね! 
 

カテゴリー

投稿の月