チャーミングな巨匠

 昨日の日経に土門拳の特集が見開き2ページに
渡って掲載されていました。土門拳といえば、かの
「NPO法人ぱれっと」の職員、姫崎由美さんが
「第15回酒田市土門拳文化賞」を受賞した快挙が
記憶に新しいところです。(こちらをどうぞ)
 著名な写真家として名前だけは知っていましたが、
作品や人となりについては殆ど知識がなかったので、
面白く読みました。記事には「鬼と恐れられた写真家」
とありましたが、当然のことながら相当強烈な個性の
持ち主だったようですね。
 彼は、日本文化を撮ることに非常な執念を燃やし、
日本の報道写真の先駆者名取洋之助の下で働いていた
ときも、報道班員として戦地に赴くことを頑として
拒み、古寺や文楽の撮影に勤しんだといいます。
記事には、新橋演舞場で人形浄瑠璃文楽を撮影した時の
エピソードがいろいろと語られていますが、当時の重い
組み立てカメラを繰り、刻々と変化する舞台を撮る
苦労は大変なものだったようです。
 優れた芸術家は、好き嫌いが激しいのが世の常。
土門拳のやきものにまつわる逸話にもそれが顕著
です。その頃著名な民芸運動家であった柳宗悦が、
当時盛んに取り上げていた李朝青磁を「お葬式くさい」
と忌避し、宗悦の一団と沖縄に行った時も、その地の
やきものを「哀れっぽさが我慢ならない」と嫌ったと
いいます。一方で伊万里の乳白色を「春の日だまりの
ようななごやかさ」と讃え、気に入っていたそうです。
 その後やきものに開眼した彼は、片っ端から日本の
古窯を訪ね歩き数々の作品を撮影します。
彼のやきものに対する慧眼にはすごいものがあったようで、
「どうしても」と弟子に借金を命じてまで手に入れた
古九谷の大きな平鉢に、後年都心のマンションを2戸も
購入できる値がついた、という話が載っています。
九谷焼美術館の中矢副館長が言うように、「我々のもの
とは違う、写真家としてのかなり鋭い眼力があった」
のでしょう。
 記事を読みながら、「おゝ、やはり一流の芸術家と
いうのはすごいもんだ」と、大いに感心してしまいました。
「土門拳賞」が写真界の「芥川賞」と言われる所以も、
この半端じゃない感性のすごさを見れば頷けるというもの
です。そしてそのすごい賞を実力で獲得した姫崎さんも
またすごい人だ、と感じ入りました。
 普段接する彼女は、とてもチャーミングで気さくな人
なのですが、きっと奥底に常人の真似できぬ素晴らしい
感性を秘めているのでしょう。遅ればせながら、改めて
「おめでとう」を言いたいと思います。
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