「正義」はおあずけ

 いやぁ、大変だった。
何が? って、そりゃあ「大変」といえば通教。
今月は300ページ以上のテキストを2冊読んで、レポートが何と4本!
いつもの倍である。それを昨日一日で清書した。
4800字の清書を一気にやるのは並大抵じゃない。
最後はボールペンを握る指がしびれてきた。
 ほんとはこんなはずじゃなかった。
10月は大変だからと結構早くから準備も進めていた。
下書きは半ば過ぎからボツボツ始めていた。
なのにたった一日で清書するはめになっちゃったのは、
縁が忙しかったということもあるけど、
それより何よりふとしたでき心のせい。
 でき心というのは、一冊の本。
レポート清書用に消せるボールペンというやつをアトレの有燐堂に
買いに行ったのが運のつき。
ついふらふらと書籍売り場に引き寄せられ、そしてついふらふらと
買ってしまった一冊の本。
 レポート仕上げるまでは開けるのをよそうとかたく決心した
はずなのに、ちょっとめくるだけならいいかとか、30分だけなら
いいかとか、そうこうしているうちにしっかり福祉のテキストと
並べてあって、ちょっと気がつくと読み耽っていたりして。
 何せこの本、めちゃめちゃ面白い。
カッパエビセンみたいにやめられない、とまらない状態。
何でこんなときに買っちゃったんだろう、って後悔してもあとのまつり。
 かの本のタイトルは『これからの「正義」の話をしよう』。
そう、ハーバード大学マイケル・サンデル教授による講義を本にした
という稀代の大ベストセラー。
 この本、前から気になってた。読んでみたいと思ってた。
1000円の図書カードもあった。先日出張講座に行った介護施設で
今度勉強会のテキストに使うというので、社長さんとの話にも出た。
「読んでみたさ」がいや増した。そんなときに本屋に行った私がバカね~。
 のっけから2004年夏にメキシコ湾で発生したハリケーンの話が出てくる。
大被害に見舞われたこの土地で次々と便乗値上げが起きる。
停電で使えない冷蔵庫やエアコンのために氷の値段が5倍にはね上がった。
その他にも屋根の修理工賃、家庭用発電機、家をなくした人たちが避難した
モーテルの宿泊料、いずれも通常の4~5倍になった。
 当然ながら非難の声が上がり、フロリダ州は「便乗値上げ禁止法」を
行使して被害の救済に乗り出したが、経済学者のなかには便乗値上げは正当だ
という意見もあった。商品の価格は需要と供給によって決まるのだから、
自由な商取引きに政府が介入するのは間違っていると。
 それに対して政府は、緊急事態で困窮している人々につけこむような商取引は
「良心に照らして不当な行為」だと反論した。しかし「良心」というような
道徳的な見解を政府から押しつけられるということに本来的な反発はないのか?
 衝撃的な例題にはこんなのもある。
貨物列車の運転手が途中でブレーキが効かないことを発見した。
行く手には5人の作業員が線路の修理工事をしている。
その手前に切り替えのポイントがあり、その先には1人の作業員がいる。
5人を助けるために1人を犠牲にしても運転手は進路を切り替えるべきだろうか?
 全ての例題に正解はない。
さすがにこの数日間は抑制がきいて本を開いてないのでまだ読み終えては
いないが、この本の目的を教授はこんな言葉にしている。
「正義に関する自分自身の見解を批判的に検討してはどうだろう─そして
自分が何を考え、またなぜそうするのかをみきわめてはどうだろう」
 何が「正義」かなど、そう簡単に決められるもんじゃない、と
教授は言いたいのだ、多分。あらゆる現象を自分の頭と心で捉えなおして、
自分の言葉で正義を語ろう、と呼びかけているのだ、きっと。
 福祉のテキストのなかに「ソーシャルワークの価値」として飽きるほど
繰り返し出てくる「社会正義」という言葉。今までは何か自分とは程遠い
感じで違和感があったけど、こういう風に語られると真剣に考えよう!
という気になる。
 それにしてもこんなすごい講義が生で聴けるなんて
さすがは世界のハーバードだねえ、と感心しながらついページが進んで
福祉のテキストの方はお留守になる。
試験の前というと教科書を尻目に小説を読んでいた学生時代の悪癖は
未だ健在…というか、これ脚本ね。
「出てください」「はい、はい」と独り言を言いつつ、
軽く一時間は過ぎる。
 さて、しばらくは心置きなく本に没頭できる…か、というと
そうでもない。縁は隣の工房ができて新しい局面を迎えるし、
何本かの出張講座も入ってるし、もちろんレポートもある。
「いつまで続くぬかるみぞ」の心境。
「正義」はちょっと横において、「これからの仕事の話をしよう」
ってな日々がまた明日から始まる。
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