午後の4時半にはもうとっぷりと暮れ、墨色の空に下弦の月。
昼間はそれほど寒くないけど、どこか浮き立たぬ街の雰囲気。
小心者の脚本に満ち満ちている師走。
いつだってこの季節はそうなんだけど。
今年は特に感じてしまう。
朝フータと散歩してると道とか掃いてる人多いしね。
そこかしこには途切れることなく小走りの勤め人の群れ。
みんな追い立てられるように職場に急ぐ。
と思えば公園のベンチに寝ているホームレスの男性。
彼を初めて認識したのはまだ暑さが残っていた頃だったけど、
あっという間に寒くなった。今年はまだいくらかいいとはいえ、
これからの季節はつらいよねえ。
今私の並列読書の一冊は「ホームレス入門」(風樹茂著・山と渓谷社)。
その本の最後に「ホームレスにならざるを得ない場合」のアドバイスが
書いてあって、「決して冬場にならないこと」とある。
「冬はビニールシートが入手しにくく、テントなしで冬を越えるのは厳しい。
過酷な環境が身体にこたえ、一気に老け込んでしまう」のだそうである。
今はちょっとボタンを掛け違えれば誰でもホームレスになる時代。
この本の著者も失業して、上野公園のホームレスと話したり、その生活を観察
したりして、自分がなったときのために備えたらしい。
フータを連れて公園の横を通るたび、どうしてもそのベンチに目がいってしまう。
私たちが通る頃はもう寝静まっており、朝はいつも空き缶なんかを集めている。
規則正しく働いてるのよね。ついでに言うと、「ホームレスは働かない」っていうのは
偏見。これはどの本にも書いてある。ホームレスの人たちは多くが必死に働いているか、
働きたいけど職がない、かだ。
でもこれからもっと寒くなったらあそこは厳しいんじゃないだろうか。
吹きさらしだし。
「入門書」を差し入れたいくらい。
福祉のテキストには、現代の福祉の最重要テーマとして
「ソーシャル・インクルージョン」を挙げているけど、小心者には
「インクルージョン」なんてできないのよね。自分のことで精一杯。
誰も彼もが今「小心者の脚本」を生きている。
そこにあるのは「苛立ち」と「不安」。
出てくる言葉は「自己責任」。
子どもの世界も大人の世界も「エクスクルージョン」ばかり。
かつて若き日、唾棄のごとく嫌った言葉は「小市民」。
「あゝ、何かいらいらする!」ってソフトバンクのCM、今の季節っぽいね。
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