月変わりの後遺症

 ここ数日は、毎月恒例レポート地獄の真っ最中である。
勢いブログを書くのはぎりぎりになり、こうして書き始めても
頭の中は今月のお題の一つである「更生保護制度」で一杯の状態。
 先日のTVに今やすっかりお馴染みのマイケル・サンデル教授が
出ていて、前に並んでいるタレントや政治家たちに「拉致被害者の
居所を知っている北朝鮮のスパイを捕らえたとき、拷問してその
居場所を聞き出すのは是か非か」という問いを出していた。賛否両論
分かれるなかで、政治家の一人が「拉致被害者を助けるためには
拷問もやむなし」と発言し、対して何をしている人かは知らないが
タレントと思しき男性が「いかなる場合であっても基本的人権が
最優先されるという前提は覆されるべきではない」と意見を述べた。
 これって政治家にこそ言って欲しい言葉じゃん。
どんな考え方も絶対に正しいとは言えないし、絶対に間違いだ
とも言えない。サンデル教授はそう言うが、そしてそれは確かに
そうなんではあるが、でもね、いやしくも民主国の政治家として
「拷問やむなし」の発言はどうなのよ。そういう思想を抱いて
政治家面しているそいつを、少なくとも私は深く軽蔑する。
 しかしそういう私だって家族が拉致されていたら、「拷問でも
何でもして聞きだせ!」と喚くかもしれない。自分が被害者だったら
人権もクソモあったもんじゃなくなるかもしれない。それでも
胸を切り裂くような苦渋に耐えて「いかなる場合も人権が最優先」
と言えりゃ本物。たかだかTVの番組でそう言ったからといって、
いざとなれば人間どうなるかわかりゃしない。思想なんぞという
代物はいつもそうした脆さと背中合わせだ。
 だけどさ、個人的には何の切迫した事情もない状況下でさえ
「拷問やむなし」と発言する政治家なんて、「私にはその程度の
思想しかありません」ということを露呈しているようなもんじゃない。
高邁な思想を口にしてりゃいいってもんでもないけど、でも思想とは
言葉だ。言葉はときに他者をも自分をも裏切るが、口にもしない奴は
その裏切りの苦々しさを味わうことさえない。
 …とつらつら書き連ねて、これ全て現在ただ今私の頭を占拠中の
「更生保護制度」による後遺症だと思い当たる。残りあと8ヶ月。
まだまだそのときどきのこうした症状からは逃れられそうもない。
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