スクラップの効用

 2005年に麻布から恵比寿に事務所を引っ越した頃から、
新聞や雑誌記事のスクラップを始めた。最初はCSNの
関連記事やインタビュー記事の保存が目的だったが、
そのうち興味の引かれる内容の記事があれば切り抜いておき、
それが貯まると台帳に貼って整理するようになった。
 段々と領域も広がり、仕事や福祉に関するものだけでなく、
書籍や映画、演劇などの批評記事、随筆、様々な商品の紹介や説明、
生活情報や料理のレシピなど、分類だけでもかなりの手間である。
 それでもこのスクラップ、結構役に立つ場面もある。
こんなこと言ってた人がいた…とか、ひきこもりの若者を
スタッフにして開いた喫茶店はどこだっけ…とか、批評欄を
読んで観たいと思った映画、あるいは読みたいと思った
本の題名…とかを知りたいときは、ひっくり返して記事を探す。
レンジや洗濯機などの電化製品を購入する際も、複数メーカーの
比較記事を探し出して参考にした。
 インターネットの方が早いじゃないか!とお思いの向きも
あるだろうが、私にとってはそうでもない。大体星の数ほどある
情報が氾濫しまくっているようなネットは、一般的な情報を
得るには便利だが、如何せん煩雑で底浅である。
一旦「自分の興味」と「情報の質」というフィルターを通して
セレクトしたスクラップ記事の方が断然濃密で使い勝手が良い。
 しかしかれこれ7年が経ち、何分にも量が増え、それにつれて
中身もごちゃついてきた。こうなると「あんな記事があった筈だけど…」
と思っても探しきれないし、それより何よりどんな記事があったのかさえ
もうすっかり失念している。
これではせっかくのスクラップの意味がない。
そこで今少しずつ見直しを始めている。
 もう古くなってしまった情報や無用な記事は捨て、
分類も見直してコンパクトに使いやすくしよう!…と
意気込んだのはいいのだが、それがなかなか進まない。
ついつい手を止めて古い記事を読み返してしまうのだ。
今や故人になってしまった人に関するコラム、読んだとき
名文だと唸った随筆、書評につられて読んだ本や
読みそびれた本、観たor観なかった映画や演劇、
時としてブログの格好な材料にも使わせてもらった多くの
記事たちを、気がつけば誠に懐かしい思いで読み耽っている
自分がいる。
 CSNでとっている新聞は日経なので、スクラップもその記事中心
なのだが、日経は企業や財界の御用新聞だから経済記事や
社会面に読むべきところは殆どない。だからその切り抜きも
それ程ない。ではどうしてとり続けているのかというと、
文化面が抜群に充実しているからである。勢い切抜きは
その領域に偏ることになる。そしてそのスクラップは、まさに
一大読み物として私の前にある。このところ本旱に悩む私に
とっては誠にありがたい救世主なのである。
 昔「さざえさん」の4こま漫画に、マスオさんかなんかが
「大掃除に畳を上げて、その下に敷いてある新聞を読み耽り、
肝心の掃除の方はちっとも進まない」というのがあって、
今で言う「あるある」の感じで妙におかしかったけど、私の
スクラップ再編成は完全にそのマスオさん状態と相成っている。
しかしこれもスクラップの思わぬ効用、まあ、急がずゆっくり
楽しむのも悪くない。
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