世の中の泳ぎ方

 当NPOが大手派遣会社からの依頼で、当該派遣会社が
行政から受託した「生活保護受給者等自立意欲喚起事業」に
携わっていることは以前のブログでも書いたが、その後HPから
応募してくださる福祉士さんが何人かおられて、随時お会いして
お話をしている。募集に応えてくださる方がいたことで、
ひとまずほっとしたところである。
 但し、すらすらと事が運んでいるかというとそうでもない。
NPOのHPから応募してくださった方は、「理念に共感して」と
いう方もおられるのだが、受託元が派遣会社だと聞くと
難色を示されるのである。どうも「派遣会社は人を使い捨てる」
とか、「長く安定した雇用が見込めない」というイメージが
先行してしまうらしい。
 福祉の分野への大手資本の参入は、確かに両刃の剣である。
だが、この流れは止められない。行政側がもうその力だけでは
手に余ることを痛感し始めたのであろう。そのこと自体は
進歩ととることもできるのである。あとは民間がこの機会を
いかに生かすかにかかっている。
 今まで行政が握っていた分野への進出には、そこに市場原理を
持ち込まれるのではないかとの危惧もあろう。民間企業が利益を
求めずして動くことはないのである。しかし、だからこそ福祉の
専門家の介入が必要なのだし、その中で「使い捨て」にされぬ
存在感のある技量を示していくことが肝要なのではなかろうか。
 新たな世の中の流れは明らかに「福祉士」を求めている。
需要と供給の原理のなかで福祉士が「働き甲斐のある場」
求めるならば、大資本とも果敢に提携していかねばなるまい。
企業の原理に振り回され、呑み込まれてしまわぬような
したたかさも身につけねばなるまい。いかなる場にあっても、
自らが最も大事にしたいことを見失わず、それを守りきる
度量があれば、いかな大企業とて毛頭恐るるに足らず、と
私は思っている。
 何はともあれ、自分がやりたいことをやるということばかり
でなく、求められることを求められるようにやることもまた、
重要なことである。世の流れに阿ねることなく、だが真っ向からは
逆らわずに上手く我が身を使いつつ、自らの到達点はしっかり視野に
入れて方向だけは決して違わぬ、そんな泳ぎ方をしたいものだと
この頃しきりに思うのである。
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