人の心を引きつけるもの

 昨日はお向かいのカフェ「まきの木」で催された
「手しごとマルシェ」に出展。
なかなか面白いイベントだった。
 カフェと一続きになっているスタジオのスペースに
畳半畳分くらいのブースが7つ。フラワーアレンジメント、
クレイアート、ペーパークラフト、ステンドグラス、布バッグ
キッズウェアと、バライティー豊かな製品が並ぶ。
昼過ぎから子連れのママたちが続々と訪れては、ランチや
お茶を楽しみながら品物を物色。どのブースもそこそこの
売れ行きみたいだった。
 私たちが出したのは、先日の総会でもお披露目をした
皮のバッグと小物、天然石&ビーズのブレスレット、
それにちょっと異色のクマタカフォトコレクションのポストカード。
その中で最も反応が良く注目を集めたのは…何と
クマタカのポストカードだった!!
 子どもが、或いは夫が生き物が大好き!という方が
「これ、すごい」と手に取って見てくれる。勿論買って
くださる方もいた。ブレスレッドの売れ行きもまあまあ
だったのだが、このポストカードへの反響は正直予想外。
いろいろ考えさせられる結果となった。
 クマタカの写真を撮っているのは、四国在住のOさん。
CSN会員の弟さんである。この10年来毎日毎日朝早くから
山に通い、写真を撮り続けてきた。そのためにかけた装備は
1千万円をくだらないと言う。だが彼には撮影した写真を
どうこうする目算は全くなかった。ただただ良い写真を撮りたい、
それだけを念じ撮り続けてきたのである。
 こうして誰に見せるでもなく彼の手元には膨大なクマタカの
写真が積み上げられていった。見かねた姉上がCSNに相談されて
ポストカードにしてみたら、ということになった。まだ
試作の段階ではあるが、なかなかきれいに仕上がった。
しかし、一般受けするポピュラーな題材ではないだけに、
今後の展開は難しそうだと感じていた。それが場違いとも
言えるイベントでの思わぬ好反響。嬉しい誤算であった。
 イベントを終えて改めて分かったこと、それはどんなもの
であれ、その作品に籠められた思いの強さ、純粋さが、人を
引きつける大きな要素になるのだ、ということである。
各ブースの作家さんたちは、皆これから大きく成長しようと
懸命に頑張っているようだった。この先は、きっとその
思いの強さが明暗を分けるのかもしれない。
 ふと、CSNの開設間もなく行った木村周先生の特別講義を
思い出した。「働くということの意味」というところで
先生は古今の作家の作品から数例を挙げて話されたが、
その中にソルジェニーツィンの「イワン・デニソビッチの一日」
という作品があった。ソビエトの収容所のイワンという囚人の
一日の生活を書いたもので、極寒のシベリアで強制労働を
させられていた壁塗り職人のイワンが、毎日朝から日暮れまで
壁塗りをし、そしてたとえ命令に背いても最後まで残って
自分の塗った壁の出来栄えを確認せずには隊列に戻らなかった、
という話だった。
 「働くということにはどうしてもそのような部分がある」
と先生は述べられた。それは「外部の強制などでは断つことの
できない、一瞬、一ときでも心が没入するようなもの」である。
単なる「好き」とか「嫌い」とかを越えた何ものかである。
「そういうものは働くことの意味を考えるときの重要な柱だと
思います」と先生はおっしゃっている。
 これはそのまま「物づくり」にも当てはまるだろう。
決して芸術家ではない私たちの物づくりの勝負どころが、そこに
あるような気がする。「好きだから」は十分な動機ではあろう。
しかしそれだけではない何か、大げさ言えば「魂を籠める」
ような何かが要るのだ。それは如実に作品に顕れる。
そしてそういうものに人は引きつけられる。
こうしたことをじっくりと噛締めつつ、今後の展開を考えたい。
 
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