おいしいもの、まずいもの

 食通で知られるT社長は、「食べ物では何が好き?」と
問われると「おいしいもの」と答える。まっこと同感。
 私は魚が好きだが、活きの悪い魚ほどまずいものはない。
近頃のスーパーに並んでいるパック入りの刺身など、食えた
もんじゃない。色の変わりかけた鮪や油の浮いた鯖など、
火を通してもまずい。
 肉も同じ。夫はよく安いオージービーフを焼いて
食べてるけど、私は絶対ごめんこうむる。それくらいなら、
少しいい豚肉をソテーした方がなんぼかおいしい。
 
 金に糸目をつけなければ、おいしいものが食べられる。
まあ、確かにそうかもしれないけど、高くてもまずいものは
ある。大体「目が飛び出るほど」の値段そのものが、もう
「まずい」の要素である。「おいしい」に「そこそこの値段で」
という条件は欠かせない。
 昨今私の住んでいる恵比寿界隈には、そういう意味で
「おいしい」と思える店がめっきり減った。「安さ」を
売り物にしている居酒屋にも何件か行ってみたが、おざなりな
お通しに何百円も取って、客をなめたようなひどいものを出す。
最近ではとある店の「明太子チャンポン」というメニュー。
この上もなくまずい代物だった。それで大して食べてもいないのに
お勘定は結構な額になっているのだ。
 そこそこの値段でおいしいものを食べようと思ったら、
良い材料を調達して自分でつくるのが一番。でも毎日
おうちご飯は無理だし、自分ではつくれないような料理や、
手に入らないような食材を食べるという外食の醍醐味もある。
 「おいしいものを食べる」というのは、何と言っても
快感である。「格差社会のサバイバル術」(三浦展著・学研新書)
という本の中で、米山公啓という神経内科の医学博士が、
「(下流の若者は)うまいものを食ったことがないから、その
感動も知らない。脳的に言うと食事もセックスも視床下部の
一部が興奮する。ドーパミンも出ないうちに満腹になったんじゃ
快感もないから、うまいものを食うために頑張るという気にも
ならないんじゃないの」と言ってたけど、まさにそうかも。
 人生のなかで「おいしいもの」の威力は大きい。
この夏はどこへも避暑に行けそうもないから、せめて
身の回りの美味堪能をよすがにエネルギーを保つことにしよう。
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