以前、一人暮らしの90代の伯母が脚の骨折で
入院した時のことである。今の病院は、高齢者
だからといって、完治するまで置いてくれたりは
しない。ひととおりの治療が終わると一週間
くらいで退院を勧告され、その後のリハビリ
テーションのための転院先も決まらずに、困って
しまって、専属のMSWさんに相談したことが
あった。
親身に話をきいてくれた彼女は、
リハビリテーション病院に関する情報などを
いろいろと教えてくれてから、話の最後にこう
言ったのである。「転院先を決めるまでには
ちょっと時間がかかるでしょうから、担当の医師
には私から何かうだうだと退院を引き延ばす
ようなことを言っておきましょう。」若いのに
なかなかの人だな、と思ったのを覚えている。
物事には正面切ってかかっていっても
うまくいかないことがある。病院のなかでは
医師は絶対権力者である。MSWごときが
早すぎる退院に真っ向から文句を言っても
事態は変わらない。それどころか、悪化する
可能性すらある。「何かうだうだと」
引き延ばすのが得策なのだ。彼女は、珍しく
そういうことが分かっている人だったのだ。
人生にはそうした局面が結構ある。
相手に力があり、なおかつ合理的な理由がある
場合は、真正面からぶつかってもうまくいかない
ときが多い。しかし「正しい」ことを証明する
ことに熱意をもつタイプ人には、こういう
搦め手を使うことを潔しとしないところがある。
そしてその手の人は、「正しい」ことは
誰にとっても正しいのだと思っているふしがある。
結局伯母はそのMSWさんが「何かうだうだと」
引き延ばしてくれたおかげで、それから10日
余りも退院を免れ、その院内でリハビリも
しっかり済ませて自力で歩けるようになって
退院した。笑顔で見送ってくれたMSWさんには、
今でも感謝している。
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