あの頃の若者達は今・・・?

 今日は急に朝日新聞社の生活文化局から取材が入りました。ここからはサンプラザ相談センターによく取材が来ていたのでそのルートかなと思ったら、たまたま今回お送りした「CSNニュース」を見て下さったとのことでした。
 記者さんの話では、「今景気が回復して失業率も久々に4%を割ろうとしているが、就職氷河期に新卒だった30代の若者たちは果たしてその恩恵を受けているのだろうか、という趣旨で記事を書きたい」のだとのことでした。「氷河期」と聞いて、相談センター閉鎖前の数年間が蘇りました。シビアな就職状況、過酷な労働条件、劣悪な職場環境などが蔓延していたあの頃。疲れ果てて精神のバランスを崩す若者たちが後を絶たず、私たちカウンセラーも日々苦闘を強いられていました。
 サンプラザには社会の底辺で毎日の生活と格闘している若者たちが大勢相談に来ていました。閉鎖になっても行き場がないクライアントさんも相当数いらして、「やむにやまれず」という気持ちに押されこのNPOを立ち上げたのですが、どうしても有料の相談になってしまうせいで、本当に底辺のクライアントさん達を結果的に切り捨てることになってしまったのは否めません。
 苦しい経済状態のなかから相談料を捻出して、引き続きNPOのカウンセリングに通っているという方もいらっしゃいますが、切れてしまった方も多く、あの人たちは今頃どうしているのだろうと考えることもしばしばあります。個人的に抱える状況は様々で、息の長いケアが必要なケースも沢山ありました。確かに行政に頼った無料カウンセリングが「甘え」を生んだり、カウンセリングの質の向上を阻むという側面はあります。しかしまだまだそうした場は必要とされているのではないかという実感は日増しに強くなっていたところでした。
 人間は社会にその能力を還元するためにのみ生きているわけではないと私は思うし、全ての人が今の社会が求める能力を持ち合わせているわけでもありません。様々な事情で積極果敢な気概や困難への耐性を育てきれなかった人もいるし、いやでも自己否定感を強めざるを得ないような状況に置かれている人もいます。「失業率の改善」だけで救われる人が果たしてどれだけいるのでしょうか。「就職氷河期」に出会った多くの失意の若者たちが、今の「景気好転」の恩恵を受けて立ち直っているとはとても思えません。
 記者さんには私の実感をそのままお話ししました。記者さんも取材してみて、「巷で言われている状況とはかけ離れた実態があることを知った」と話されていました。恩恵を受けているのはおそらく極く一部の「できる人たち」なのでしょう。そういう人たちは「氷河期」であっても何とか持ちこたえる力を持っていたと言えます。早々に社会の体制からはじき飛ばされてしまった人たちは、多分統計の数字にさえ反映されないのかもしれません。
 「それならどうしたらいいとお考えですか?」と記者さんは問います。勿論万能な処方箋などあるわけもないのですが、「今こそサンプラザ相談センターのようなところが必要だと思います。」ということは強く訴えました。記事になるかどうかはわかりませんが、正直な実感です。そして願わくば「小規模でもいいからああいう場をつくりたい」というのが、近頃の私の夢でもあります。
 
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