「はぁ、しば漬け食べたい」
先週、このフレーズのCMでブレイクしたタレントの山口美江が亡くなった。
実は私、彼女の大ファンなんです。
平安絵巻に出てきそうな顔立ちときれいなロングヘア、
バイリンガルっぽい話し方に好き嫌いがはっきりした言動、
バブル期を駆け抜けた華々しい経歴は、
バラエティや報道番組で彼女を見ては溜め息まじりに、
「きれい」「彼女のようになりたいな」と、
他の好きな女優とはまた違った想いでいました。
芸能界引退後はパタッと見る機会が減りはしたものの、
それでも一世風靡したタレントだけあって、
しばらくしてから彼女が横浜でお店を開いていると情報があり、
「完全不定休・気まぐれ運営」の触れ込みにも関わらず、
当時付き合っていたPと共に現地へ出向いたのです。
不定休を免れたのか店はこじんまりとやっていて、
私はこの目で彼女を見ることができたのです!
キレイな方でした。。
深緑のアオザイ風なワンピースに、髪をひとつ団子のように後ろでまとめて、
とてもエキゾチックな出で立ちだったと記憶しています。
私はダメ元で「ファンなんですよ」と伝え、
サインをお願いしたところ快く承諾してくれ、
私は急いでサイン台帳を買うべく文房具屋を探し、
再び店に戻り、サインを書いてもらったのです。
もううれしくてうれしくて、私は汚さないようサインをセロファンに入れ、
大事にしまいました。
Pはそんな私の様子を見て、
「めずらしいよね、ゲイなのにここまでファンなんて」と言ってました。
たぶんゲイだからというより、
山口美江のファンだというのがめずらしいのだと思う。
性の対象として考えにくいのはそうなんだけど、
私が彼女のようになりたいと思ったのは経歴だけでなく、
「キツイ性格」「言いたい放題」な立ち振る舞いがスカッとしていて、
世間の評判にも屈せず堂々としているのかと思えば、
過度な潔癖症や自称ファザコンというカタチで現れるあたりが、
見た目のキレイさと妙にフィットしていて、
本音発言が苦手な私には憧れだったんです。
ファン心理が加担しているからか、
あばたもえくぼとして捉えてしまうのかな。
そんな彼女を最後に見たのは、ある通販番組でした。
声こそは昔のままで機転の利くトークは変わらずでしたが、
容貌は年齢によってかわっていったとはいえない、
明らかに病的なやせ方をしていたので、とても驚きました。
それでも直近のインタビューで、
―どんな男性がお好きですか?
芸能人なら故・児玉清さん。ああいう知的で落ち着いていて、品がある人。
悪いけど、最近よくTVに出ている女子供みたいな人のよさがわからない。
―じゃあ、なよなよしている人は嫌い?
面白くない人が嫌い(笑)。楽しんごとか。
…あれれ、言っちゃうんだ(苦笑)
訃報が流れたその日、
なんとまぁ元彼Pから「山口美江が亡くなったよ」と、
速報ニュース並みのメールを送ってくれ、
私はすぐさまテレビをつけるとワイドショーで流れていました。
かなりショックでした。
身内でも知人でもないただのファンでありながら、
彼女のようになりたいと思っていたあの頃の私が無くなったような気がして、
またメソメソしました。
彼女は、いわゆる孤独死の状態で発見された。
あるコメンテーターが「山口さんは確かに一人でいるときに死んでしまったが、
だからといって孤独死と言えるのか。彼女は一人で居たくて一人で往ったのでは。」
というコメントが、私が彼女に対するイメージと合っていたし、
不謹慎を承知で、最期までスカッとして彼女らしいような気もした。
そして思い出したようにサインを探すと、日付は「2002.4.27」と書いてある。
10年前のサイン。
山口美江はそんなことを知らないように、私のかつての憧れと共に消えていった。