昨今、ニュースを賑わせている食品表示偽装問題。
大阪のホテルを皮切りに全国へ広がり、
ついにはデパートまでその事実を明らかにしはじめた。
いい食材を使い、見た目の豪華さに目を奪われ、
高額な金を払ったのに食材はニセモノと言われれば、
腹のひとつも立つかもしれない。
しかしそれは「金」という対価が引き起こすもので、
もし本物の食材を知り、自分の舌に正直であれば、
このタイミングで腹が立つこともないだろう。
この不祥事は非難されるものではあるが、
微妙な味加減がわからなくなっている消費者はどうなのだろう。
魚は産地によって味は違うもの。
肉は切り落としかミンチの寄せ集めなのか。
そして本物のおいしい食材こそ、
無駄に加工したり手を加えない。
私もそうだが、どれだけ本物の味を知っているのか。
味に違和感があれば、食したそのときに感想が出る。
しかしそれがホテルやデパートで提供されているから、
一時でも「おいしい」と感じたのなら、
それは味覚ではなく錯覚を味わったのだ。
期待があるからこそ引き起こす悔しさだったり、
本当においしくないものを口にした悔しさだったり、
人それぞれに考えられる。
いまどきの料理は、加工品か何かしら手を加えている。
一食材で勝負できない事情も背景にあるのだろうが、
それはまさしく食文化の衰退とも言えるだろう。
高額な金を払っても本物を口にできる時代は、
もはや終わっているのかもしれない。