社会心理学に「ナイーブ・リアリズム」という
言葉がある。人は誰でも「自分だけは他者と違って、
外界の事物を客観的事実そのままに見ている」のだ
と思っている。そして「自分の態度、考え、好み
などはそうした冷静で歪みのない理解の結果だ」
という信念を持っている。その信念のことを
「ナイーブ・リアリズム」つまり「幼稚な現実認識」
というのである。
「自分は世界をありのままに見ている」という
無邪気な思い込みが、「他の人も自分と同じように
見るのが当然だ」、あるいは「自分と同じように
感じたり考えたりしないのは、その人の認知が
歪んでいるからだ」と考える。ま、要するに
「自分だけはまともだけど他の人はみんなバカ」
という、私たち誰もが持ちがちな信念のことなのだ。
例えばこんな実験があるそうだ。
政治報道をはじめとする様々な問題について、
「あなたはマスメディアの影響を受けますか」
という質問と「世間一般の人は影響を受けると
思いますか」という質問を行うと、後者の問いに
肯定する人の割合が前者のそれより一貫して高い
という。
そういえば、「ステレオタイプ」というのも
社会心理学の言葉だ。自分にとって余り重要じゃ
ないものに対しては、人はその内容を吟味して
検証しようとはせず、「ステレオタイプ」の
既成概念を使って済ませようとする。例えば
「女はこうだから」とか、「役人というのは
こんなもんだ」とかである。
人は、全ての事象に対して深い理解と認識を
持つよう努められるわけじゃない。そんなことを
していたら、認知のキャパシティーがパンクして
しまう。だから「ステレオタイプ」の認知も
「適応」という観点からみると必要ってことなのよね。
だけど「ステレオタイプ」は一方で誤解や偏見を
生む温床でもある。私たちは知らず知らずにこうした
認知的方略を駆使して、自己の信念を守ろうとして
いるのだ。こうしてみると、「ありのままの自己」
なんていうのは全く幻想でしかないと思えてくるよね。
社会心理学は、どんなことであれ事象の証明を旨と
しているので、これ迄に沢山の実験が行われている。
例えば、人種差別意識など全くない、という人たちの
潜在意識に無自覚な差別的態度があることを明らかに
したり、身体的魅力により有罪性の判断が影響される
ことや、「公正世界仮説」という因果応報的世界観に
よって犯罪などの犠牲者非難が起きることなどを
証明してみせたりしている。
え?私に限ってそんなことはないって?
それこそが、あなたのナイーブ・リアリズム!
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