今年のサクラは早咲きでしたね。
私にとって、サクラのピークは4月の入学式あたりだと思っています。
しかし今年は3月のうちに満開となり、
サクラが駆け足でやって来たことに春の訪れを楽しむ余裕もなく、
せかされているような気持ちでいました。
ということで今年も地元でサクラを見ようかと考えていたところ、
めずらしくゲイの知人からお誘いを受けた。
「どうせアンタヒマでしょ?」と、ゲイバーのママKさん。
冗談口調でも気乗りしないのはサクラが駆け足すぎるからか。
しかし断る文句も思いつかず、とりあえず約束をした。
場所は浅草。
天気予報では曇りか雨だったせいか、ごったがえすほどの混雑ではなかった。
時間通りに行くと、主催者プラス3人と合流した。
そのうち2人は朝まで飲んでいたようで、
迎え酒でビールを飲みたいとか、あの人力車の男に乗っけてもらいたいだの、
昼間だというのにゲイバー並みのトーク炸裂。
ああだこうだ言いながら、30分ほど浅草界隈を歩いた。
そうこうしてやってきたのは隅田公園。
対岸には咲き誇っているサクラの木々と、昨年オープンしたスカイツリー。
思っていた以上に見事な咲っぷりで、
サクラピンクは周囲のうす曇の景色をほのかに照らしているようだった。
そしてKさんの案内に従い言問橋を渡り、墨田区主催の花見会場へ到着。
この会場には屋台が二つと地面に座るテーブルが30席ほど設けられており、
エリア内では美空ひばりの歌謡曲が延々と流れ、
いかにも手作り感のあるレトロな雰囲気だ。
そこへ地元支援センターの見回りもあって、
「あんま飲み過ぎないようにねー」なんて声も。
屋台をのぞいてみると、威勢のいい高齢のメンバー達。
「ビールはそんな本数じゃ足りないだろ、にぃちゃん」
「日本酒なら熱燗がいいよ」
「このお新香は手作りだからうまいんだぞー」と、
品を買う渡すだけでなくちょっとした一言が楽しくなるやりとりで、
これも下町という場所柄が醸す開放感なんだろう。
傍からみれば40過ぎのオヤジの集団なのに、
交わす言葉は「ちょっとなんなのよー」とオバサン。
こういうゲイの集まりでは気取って飲むくせがあったけど、
今回はとてもリラックスして居られた。
そう感じるのはこの開放感あってこそ。
ワンカップ片手にちょうど飲み口にサクラの花びらが舞い落ちたのを見て、
駆け足だろうが遅かろうがサクラはサクラ。
サクラにもその時折によってペースがあるんだよみたいな気持ちになり、
それを私になぞらえた。
どんなに外面を気取っても、散るときは散る。
その散ったサクラにも、魅力があるんだゾ。
さて、来年はどこでどんな様子でサクラを眺めるのだろう。