夜風が沁みた

港区芝公園。
ゴールデンウィーク初日、私はオランダ大使館へ向かった。
ここで、あるLGBT団体の周年パーティーが催されたのだ。
私はゲイの一人として、
このセクシャリティを抱えどう生きていこうか。
そんなヒントを得たくてネットで検索したところ、
「LGBTの老人ホームづくり」を活動目標にしている団体を見つけた。
日本でのセクシャルマイノリティの市民権は、まだ得始めたばかり。
社会通念として誤解されることは多く、決してカミングアウトしやすい環境ではない。
だがマスコミや海外の動きを見ていると、ある程度の理解を示す人も増えつつある。
そうなるとこれからの高齢化社会で、
当事者が年老いてでもセクシャルをオープンにできるスペースつくりは、
非常に需要がありそうだ。
そんな理由から、この団体に興味を持ったのだ。
早速、具体的な活動がわかるイベントの有無をメールでたずねると、
担当者からこの周年パーティーへの参加を提案された。
顔見知りのいないパーティーへ一人で参加とは、及び腰になった。
でも機会を失うデメリットを考え、何とか申込みを済ませた。
会場となる大使館は、私は初めて行った。
館内のインテリアはどれも落ち着いたアンティークな物ばかりで、
庭園にはオランダの花、チューリップが鮮やかに咲いていた。
到着するとまずウエルカムワイン等が振舞われ、
それを手にメイン会場の庭園から人の出入りを眺めていた。
LGBT以外にノーマルや家族連れなど様々な人達が来場し、
西洋館のパーティーという言葉に相応しい華やかさだった。
申込み時に250名と書かれていた定員が満員御礼となったように、
会場はほどなく埋まった。
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進行役の挨拶で始まり、
オランダ大使、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ、
LGBT団体、そして団体スポンサーの各代表者のスピーチが続いた。
それが終わると、今までの活動の様子を振り返るスライドショーが流れた。
季節限定でカフェをやったり、
資産運用の勉強会や老人ホームでの介護体験実習等、色々取り組んできたようだ。
しかし活動実績に対して説明やパネルディスカッションはなく、
会場内はイベント名どおり社交パーティーの様相だった。
参加者の大半は団体を支援する個人かグループばかりで、
それぞれに顔見知りのスタッフやグループ同士で会話をしている。
私も何か話をと思ってきっかけをさがしたけどまったくつかめず、
参加者やスタッフに名札がないため誰が何者かわからず、
途方に暮れてしまった。及び腰から腰が引けた感じだ。
こういう時にうまく関われる人を「処世術に長けている」と、
いらぬことを考えていた。何をしているんだか、私。
そして時間が経ち、最後に代表の挨拶。
「私にとって年を重ねるということは、
いい仲間と出会い、いい経験をし、自分を成長させていくことです。」
公然の発言としては、清々しい内容だ。
だが私には「何がいい仲間だよ、成長だよ」と、
その言い回しに毒々しさを感じ、遠く学生時代の記憶がよみがえった。
そして、目標に向けてやっていきましょうという言葉がなかったこと。
だが、これだけのイベントを開催できる手腕や行動力はたしかだ。
そう、いつしか団体の活動の様子を見るという目的から、
私のこころの問題へとすり替わってしまったのだ。
私は自身のコミュニケート不全に苛立ち、それを強く噛み締めた。
この程度のことで、セクシャリティを抱えてどう生きていくかだなんて。
夜風が沁みた。
さぁ、伸るか反るか。
とりあえず、お礼のメールは出した。
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