ちょっとなら媚薬

長いこと吸わないでいたタバコを一本吸った。
久々にクラッとくるこの感覚は、
初めてタバコを吸ったときを思い起こさせた。
なんとなくトランスした状態で会話をすると、
気分も「落ち着いたように」感じてくる。
しかしだ。
吸い終わったあとの口の中や手についた残り香の嫌悪と、、
カラダ全体から発する「んなもん取り入れたくねぇ!」のメッセージは、
相変わらず敏感で、以前にも増して強くなっている。
落ち着いたと感じるのは脳内だけで、カラダは拒否しているのだ。
なのに、もう一本と吸いたくなる。
私の傾向として、タバコを吸うと全体的にエネルギーが低下して、
食べること、考えること、動くことがなんとなく鈍くなる。
そもそも私がタバコをやめたのは、
タバコの値上がりとカラダへの負担からだった。
その負担は、心身エネルギーの低下と体内器官への影響からだった。
要は、私には合わないのだ。
今回は細かい作業をして気が張ったため、
その緊張を放ちたくて作業終了後にタバコを吸いたいと思った。
ひとたびその厳戒令を解いてしまうと、あれよあれよと吸い出す。
「タバコを吸うと、話が弾むよねぇ」
「タバコがあると、物思いにふけやすいよねぇ」
色々言い分をつけては、もらいタバコに火を点ける。
そして吸い終わると、
「あぁ、口の中がニコチンくさいなぁ」
「頭がボンヤリしてるなぁ」
カラダの拒否メッセージを意識するだけで罪悪感を持つ。
それまでもらいタバコだったのが、
いよいよ自身で一箱買ったとき、やばいと感じた。
それはタバコを吸う行為が、
私にとって負のスパイラルへいく誘発のような気がしたからだ。
タバコを数本吸っただけ、こんなにもスプリットしたありさまだ。
これが中毒、依存というものだろうか。
前回の禁煙のときは離脱症状もあり非常に辛かったが、
今回は以前にも増してカラダが拒否しているので、
もう吸えないというところで一昨日から吸わずにとどまっている。
ちょっとなら媚薬も、快楽という一撃の強さは計り知れない。
それが依存のはじまりというものなのでしょう。
タバコを吸った本数は一週間で一箱、体重はみるみる減少。
おそるべしだ。
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