受診者A

今日の仕事も後僅か。連休の遊び疲れで早く帰ろうと思っていた矢先、
問題が起きた。
順番に来る筈の受診者の順番が飛んだ。
おかしいな?何故来ない?何か揉めているのだろうか?
その人物Aは10番位遅れて来室した。
「○○番の方、どうぞお入り下さい。」と声を掛けながら受診者Aの様子を窺った。
普通の人のように感じた。何が問題?3種目ある検査のうち、第1検査は
問題無くクリアー。へー、普通。何が問題?・・と軽く流していると、
第2検査が始まって数秒後、ブチブチと苦情申立が始まった。
検査機器に問題が有るのじゃないか?何故こんな画面が出るんだ?
時間にして約5分間。私は出来る限りの丁寧さを以って受診者Aに機器の説明
を簡単にした。しかし受診者Aの疑問と不審は深まるばかりで納得しない。
後に検査すべく受診者を控え、「じゃー、この検査はどうしましょうか?
おやりになりますか?」と駄々を捏ねる受診者Aに、私は(頼むから素直に
検査させてよ。)と祈るような気持ちで尋ねた。
そんな私の気持ちを見透かすかの様に「こんな気持ちで検査する気持ちには
なれない。」という受診者Aの言葉に絶句してしまった。どうしたもんか?、
一瞬の間が空いた。すると同室の技師が「技師長を呼んで来ましょうか?」
と私に聞いて来た。私が、尽かさず「呼んで来て!」とその技師に頼むと、
受診者Aは「別に呼んで来なくても・・。」と少し緊張した表情に変わった。
その表情を見た瞬間、少し問題が複雑化しそうな微妙な感覚が残った。
そして、その予感は的中した。技師長の説明で相手の感情は、もっと高ぶった。
二人の男性・・受診者Aと技師長の声・・が段々と大きくなり、部屋の外に並
ぶ他の受診者に苛立ちの感情を抱かせた。
「その受診者の為に、時間を拘束されなきゃならない理由は俺たちには無い。
他の部屋で説明なり話し合いなり、やればいいだろう。」と受診者Bの突然の
申し出に、ハッとした。ものの5分の、やり取りにしても、すっかり技師長と
私は待っている受診者の事は脳裏になかった。
私と技師長の受診者Aに対する思いは、同じだった。
検査機器の説明さえすれば、受診者Aは必ず納得して検査に応じてくれる筈だと。
多くの人が何の疑問も抱かず、検査に応じてくれるのだから。
受診者Aだって、そうに違いないと。
結局、受診者Aは第2検査、第3検査は拒否した。
しかし他部門の検査は別人の様に素直に受診したと後で聞かされ驚いた。
何故?どうして頑なに私の担当検査は拒否したのか?何が問題だったのか?
仕事を終え、帰宅しても気になり考えた。
出した結論は受診者の真意が汲み取れなかった自分達の思い込みに間違いが有っ
たのではないだろうか?という事だった。
何故なら、私の担当する検査が受診者Aの通院目的になっている疾患に大きく関与
している項目だったからだ。
「○○病で通院しているから検査は受けない。」という受診者Aの申し入れが有った
事を、散々こちら側の説明をした後に検査受付事務に聞かされた。
本当は検査の悪い結果を受診者は認めたくなかったのではないか?
検査機器がどうのこうの・・なんて関係無かったんでは無いか?
本当は、どんなデーターが出たにせよ、「大丈夫ですよ。」と言って欲しかっただけ
なのでは?
相手の立場になって、ものを考えるという事の難しさを思い知らされた一日だった。
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