蛇のように

  今朝随分音沙汰のなかった昔の知り合いから
電話がありました。彼女とは6年位前にたまたま
あるセミナーで知り合ったのですが、それはちょうど
私がこのCSNを立ち上げようとしていた頃で、そのとき
彼女は東京のはずれの自宅で、夫とともに
「精神障害者のたまり場」のような場をつくっていて、
それをNPOにしようとしていたこともあり、それから
時折連絡をくれるようになりました。
 しかしその後、私もNPOの立ち上げに忙殺され、
彼女からの連絡がいつしか途絶えてしまっても
「きっと彼女も同じように忙しいんだろう」くらいに思い、
余り思い出すこともなくなっていました。その彼女の
久々の電話でちょっとびっくりしましたが、「偶然
ホームページを見て、頑張ってるんだなあと思って」
という彼女の言葉が嬉しくもありました。
 「あなたも頑張ってるんでしょ?」という私の問いかけに
「いやあ、あれから1年もしないうちに駄目になっちゃったのよ」
という意外な答えが返ってきました。彼女の話によると、
NPOを立ち上げたのは、行政の助成金や企業の支援金を
何とかして得ようとしたためで、それまでの「たまり場」の
運営は障害者たちが月々に払う500円の会費だけで
まかなっていたそうです。いくら自宅で家賃がかからない
とはいえ、到底それではやっていけるはずもなく、
夫婦でパートやアルバイトの出稼ぎをして何とか
補填してきたものの、「あのとき既に限界に達していた」
と彼女は言います。
 しかし、NPOを立ち上げたからといって、すぐに金が
集まるわけもなく、模索した作業所への転換も
うまくいかず、「自宅を改装してもっと機能的で
快適な場づくりをしたい」という彼女たち夫婦の夢は、
あえなく断念せざるを得ない状況に追い込まれて
しまったらしいのです。
 「どんなに気持ちがあってもそれだけじゃだめなのよね」
と彼女は言いました。夫婦で必死に奔走しても結局は
成果の上がらなかった苦難の日々を口惜しげに語るのを
聞きながら、私は複雑な思いに捉えられていました。
 行政や企業から金を引き出すためには、いやでも
駆け引きや戦略が必要です。
「私たちはとても意味のあることをやっている」とどんなに
主張しても、それだけでは組織は動きません。いくら
NPOを立ち上げたからといって、「それでどこかの組織が
金を出してくれる」と期待していたとしたら、やはりそれは
甘いと言わざるを得ません。「鳩のように清く・・・」だけでは
物事は成就しないのです。
 しかし一時は30人近くの障害者たちが、彼女たち夫婦の
人柄を慕って集まってきて、食事をともにし、語り合い、
明日の元気を得ていたことを思うと、彼女の無念さに
大いに共感を覚えてしまう自分もいます。
 一通り話し終えて、「あなたは挫けずに頑張ってね」と言葉を
かけてくれる彼女に、「そうね」と答えながら、何かやりきれない
思いが湧き上がりました。それでも「まだ全てを諦めたわけじゃない、
ここを売ってどこか田舎でもう一度挑戦しようと思っている」
と、切り際に彼女の残した言葉に一抹の希望を託して
30分余りにも渡った彼女との会話は終わりました。
 以前内閣府のNPO活動実態に関するアンケート調査で、
CSNにヒアリングにいらした調査員の話では、全国で
3万5千にも及ぶNPOのなかで、活発に活動しているのは
2割にも満たないということでした。またその大半が、資金を
行政からの事業委託に依存しているとのことで、「これでは
行政の下請け機関に成り下がってしまう」という声も聞かれます。
 電話をくれた彼女の状況が、「明日はわが身」とならない
保証はありません。 来年度は「蛇のように聡く」なって、
企業や行政のひも付きにならずともやっていける道を
何とか見つけたいものです。
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