必殺!?コンシェルジュ

 やっと会報の発送も終わり、ちょっと一息というところで、
かねてから泊ってみたかった椿山壮フォーシーズンズホテルに
一泊してきました。ちょうど「シルバーウィーク棚卸しセール」
というのをやってて、期間限定の超格安プランがあったので、
「ラッキー!」とばかり予約した次第。
 さすが格式のあるホテル、その重厚なつくりやあちこちに
置かれている調度品の贅沢さには驚嘆するばかり。迷路の
ような回廊を歩き回り、天文学的な値段であろうと思われる
大きな壷の一つ一つに触ってみたり、意匠をこらした豪奢な
ソファーにいちいち座ってみたりするうち、あっという間に
数時間を費やし、喉が渇いて部屋に戻って冷蔵庫の中の飲み物
を見れば、何とジュースの小瓶が950円、ただの水でも650円
もする、ウワーオ!
 勿論施設内のどこにも自販機なんかないし、カフェも
レストランも他のホテルより3割がたはお高い。いくら
超格安に泊れても、こんなところで食事していたのでは、
宿泊費が2倍、3倍になってしまう。はなから食事は
外でしようと思っていたのだけれど、さてどこへ行こうか。
そこでちょっとこのあたりの地理でも聞こうかと思い、
コンシェルジュのいるコーナーに行ってみました。
 そこで迎えてくれたのが、40台前半かと思しきなかなか
イケメンの男性コンシェルジュ。やわらかい笑みと物腰で
私の話を聞くと、頷きながら何やら分厚いファイルを
取り出して目の前に広げました。そこには何と驚くことに、
大衆的な居酒屋から高級レストランに至るまで、近隣の
レストラン情報がぎっしりファイルされており、価格から
雰囲気までどんな要望にでも応えられるような見事な資料に
なっていました。その上どこも自分で足を運び味も確かめて
いるらしく、ひとつひとつ丁寧に説明してくれました。
 いやぁ、何というプロ魂!これぞコンシェルジュの鑑なり。
まるで「金のないやつは来るな」といわんばかりの雰囲気に、
場違いなところにいるような私の違和感もこれですっかり
吹っ飛びました。げんきんにもさすが一流ホテルは違うわあ、
と感心することしきり。私がチョイスした神楽坂の中華レストラン
にも、いかにも行きつけという感じで予約の電話を入れて
くれました。
 もう大感激のかなりんは、何かというとコンシェルジュ。
「予約時間より早めに行って神楽坂の街をふらふらしてみたい」
と言えば、「もう是非ふらふらしてみてください。神楽坂は
ふらふらするのに絶好の街です」と手放しで受け入れてくれ、
プリントアウトしてくれたお店の地図で、よさそうな散策ルートを
あれこれ説明して、タクシーの運転手にも丁寧に依頼して、
送り出してくれました。
 予約した中華レストランは神楽坂の路地裏にあって、
教えてもらえなければ全く来ることもなかったであろう
ような玄人っぽい佇まい。こじんまりとしていましたが、
彼が言っていたように味はなかなかのものでした。
「神楽坂のふらふら」も堪能して、いい機嫌でホテルに
帰ると、コンシェルジュ氏が「いかがでしたか?」と
声をかけてくれました。「素晴らしかったですよ!」
と答えると、「それはよかった」と小さく拍手のジェスチャー。
それがまた嫌味でなく、さりげなく、いやぁ、仕事人ですねえ、
参りました!
 そんなわけで、超格安プランながら、めでたくリフレッシュ
気分を満喫できました。浴室のシャワーの詮が硬くて使えなかった
(シャワールームは別にあったからよかったけど)のと、翌日
の土曜日にやたら結婚式が多くて、せっかくの庭園にうじゃうじゃ
と人が湧いて出たのとが、ちょっと不快といえば不快だったけど、
まあそれもかのコンシェルジュ氏の仕事ぶりから差し引いても
おつりがくるというもの。奮発したカフェのケーキもおいしかったし、
総括はプラス。
 しかし、こんなところで金のことなぞ考えずに散財できる
身分になってみたいもんですねえ。
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