自己評価と自己受容

 CSNニュースが皆さんのお手元に届けられて、
いろいろな方からお礼やら励ましやらのご連絡を
頂き、ほっとすると同時に嬉しさもひとしおです。
そのなかで久しぶりに会ってお話したいと
おっしゃって、事務所をお訪ねくださった方が
ありました。
 その方は、以一年ほど前に私が出た東京都主催の
引きこもり支援に関連するセミナーで講師をされて
いたT さんで、学習塾を経営されていらっしゃいます。
それが割合この近くだったもので、私の方が「そのうち
お訪ねします」と言いながら、なかなかお約束が
果たせずにいたのですが、今回ニュースをお送りした
のがきっかけで、連絡をくださいました。
 Tさんの塾の何割が不登校や引きこもりの生徒だ
そうで、セミナーのテーマもたしか「NPOの経営を
どうするか」というようなことでした。「支援は大切だが、
総力をそこに注ぎ込んでいたのではとても経営的に
成り立たない」ということで、「私も試行錯誤の毎日
です」と率直に話されていたのが印象に残っています。
その折に私たちが考えていた「お菓子づくり」を通して
の雇用創出と事業展開について少し話をしたのですが、
非常に興味をもってくださって、今回の訪問も「その
計画がどうなったか」という関心が大きかったようです。
 結局はそれ以外のことにも話がはずんで、瞬く間に
2時間近くがすぎてしまいましたが、その中で非常に
私が興味を引かれた話がありました。 Tさんの塾では
「10代のアスリートたちの学習支援」も手がけている
とのことで、若いうちに全国からスカウトされて集まって
くるスポーツ選手に勉学の大切さを説き、勉強との
両立をサポートしているとのことです。競技の練習に
明け暮れる選手たちには苦しい道ですが、そこでの
両立を実現することが、選手生命の短いアスリートたち
の、その後の生き方を左右する命題でもあるといいます。
 その中には今年の「サッカー日本代表」に選ばれた
選手もいるとか。Tさんは、「若いうちにちやほやされると
それが終わってしまってからの落差に耐えられない。
長い一生を持ちこたえるだけの力をつけておくことが
彼らにとっては至極重要なこと」と話していましたが、
真にその通りだと思いました。
 それ以上に興味深かったのは、Tさんの塾で
選手たちに定期的に行っているという「自己評価テスト」
の結果が、「実力のある者ほど評価が低い」という
話でした。どんなに力があっても、日本全国、引いては
全世界を相手に競争している彼らにとって、自分より
力のある選手は必ず存在する。常に「まだまだ」という
思いに駆られるのも当然のことです。それに「自分は
これでいい」なんて思ったら、そこで成長は止まって
しまいかねない。「まだまだ自分はだめだ」という
気持ちをばねにして過酷な訓練を耐え、力を伸ばして
いくのでしょう。
 この話から改めて考えたのは、「自己評価」と
「自己受容」というのは、全く別次元の課題なのだ
ということです。よく「自信を持て」と言われますが、
「自信」というのは「評価」をもとにしていることが
多いのではないでしょうか。他者と比較した自分の
位置が高いと思われること、また他者からそれを
認められることなしに「自信をもつ」ということは、
かなり難しいのではないでしょうか。
 これに反して「自己受容」というのは、「今の
ありのままの自分を受け入れる」ということです。
「評価」は全く関係ありません。しかし幼い頃から
「他者との比較」に晒されてくると、「他者より
優れていなければ自分はだめだ」という思い込みが
強化され、それにとらわれてしまいます。
アスリートならずともそういう傾向は顕著ですね。
 確かに競争が自分を鍛え、力を伸ばす要素に
なることは否めません。しかしそれはあくまでも
ごく一面の価値観に依っているに過ぎません。
100メートルを10秒以下で走れることは、勿論
素晴らしいことではありますが、日常ではそんな
ことがでできなくてもちっとも困りません。どれほど
凄い記録であろうと、才能であろうと、「競争に勝つ」
ということの価値が褒め称えられるのは、人生の
ほんの一断面においてに過ぎない、そういうことも
しっかり弁えていないと、人生を誤りかねません。
 以前読んだ曽野綾子氏の「太郎物語」という小説で、
高校陸上選手の太郎が、「スポーツをやる意味って、
いつも必ず自分の前を走っている選手がいるって
思い知ることにあるんだと思う」というようなことを
言っていたのを思い出しました。そこそこの資質
しか持たない子のほうが、却ってそういうことを
早く悟り、ありのままの自分を受け入れることが
できるのかも知れません。
 たいした才能もなく、イチロウにもナカタにも
なれない私を含めた凡才たちのほうが「NO1
幻想」から早々に逃れられるとしたら、「凡才も
またよきかな」ですね。

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