今年のキャリアサポーター養成講座・実習コースでは、カウンセリング技法のトレイニングの一環として「マイクロカウンセリング」の学習を採り入れています。これは、アメリカのアレン・アイビーという人が考案したもので、様々なカウンセリング技法を体系的に整備して実習できるようにつくられています。技法はピラミッドのような三角形で階層化されており、その一番下の基盤となるところには「基本的かかわり技法」の数々が挙げられていますが、昨日のブログでA子さんが書いていた「感情の反映」というのもここにある技法の一つです。
「感情の反映」とは、「来談者の情動の世界を正確に感じとる技法」であるとされています。クライエントさんは、まず「こういうことがあった」とか「こんな風になっている」とかいう事柄や状況の説明から入ることが多いのですが、そのとき語りながらどんな風に感じているのかについては殆ど意識を向けていません。また、感情というのは非情に曖昧で、「どんな感じですか?」と尋ねても言葉にできないことがままあります。カウンセラーがクライエントの準拠枠や感じ方を正確に捉えることが、カウンセリングに最も重要とされている「共感」の基礎となります。
カウンセラーがクライエントが知覚している世界を感じ取り、それをその人に伝えることによって、クライエントの自己への気づきを促し自己理解を深めるよう導くことは、援助の質を高めるのに役立ちます。カウンセリングというのは、言葉で話されることを聴くばかりでなく、その人の見方や感じ方、即ちその人の「存在」そのものを聴くことだと言えます。それにはクライエントの非言語的なメッセージに注目することが大切です。口調や仕草、声の調子や表情などは言葉以上に雄弁な手がかりとなります。
ピラミッドの「基本的かかわり技法」の段は、幾つかの細かい階層から成っていますが、「感情の反映」の他には、「呼吸や視線、身体の動きによるかかわり行動」「開かれた質問と閉ざされた質問」、「言い換えと励まし」、「意味の反映」などの層があります。その上の層には「焦点の当て方技法」、指示や助言、フィードバックを含む「積極技法」、「対決技法」があり、そして「技法の連鎖および面接の構造化」の層を経て、「技法の統合」というピラミッドの頂点に達します。
このピラミッドを登っていくのはなかなか大変なことなんですね。全ては最初の「基本的かかわり技法」がしっかり身についているかどうかにかかっています。基盤が軟弱であれば、登っている途中で崩れてしまいますからね。ですから今回の講座では、この部分に殆どの時間を割きました。A子さんはちょうど仕事が忙しい時期で、心ならずも講座に遅れたり休んだりしたことが何回かあったので、十分な理解に至らなかったのかもしれませんね。
各受講生が行った3回連続のCRP(カウンセリングロールプレイ)に「このマイクロカウンセリング技法で学んだことを生かす」というのも、今年の重要な課題の一つです。それとは別に各技法ごとのCRPも毎回講座の中で行いました。しかしいつも痛感させられるのは、A子さんも言っているように「頭で分かっても身体が分からなければだめ」ということです。技法はあくまでも技法でしかありません。それを使いこなす「主体」がいてはじめて生きるのです。
人間と技法が見事に統合されるためには、たゆまぬトレイニングあるのみです。技法を身体で覚えこんでこそ、頭で考えなくても自然に使えるようになるのですから。幸い「7色のクライアント役」にも恵まれているので、来年度は沢山のトレイニングができるような講座を考えようと思っています。
↑ブログを読んだらクリックしてね!