女性センターの未来

 先週の土曜日に渋谷区の女性センター・アイリスで利用者懇談会があった。今年度から館長が代わり、また女性センターがあと4年半で今借りている主婦連のビルの契約が切れるということもあって、「今後の女性センターの活動をどのようにしていったらいいのか」ということが、主な話題となった。
 当日は新館長の他に区長も出席して論議が交わされたが、このセンターが将来の「男女共同参画社会」実現のための拠点になり得るのかどうか、その分岐点に来ているという認識が少しずつ強まりつつあるという感じを受けた。
 但し出席者は100を越える登録団体のうちの僅か十数団体。多くの団体がそれほど「女性センターの未来」になど関心がないことも伺えた。利用料がただということもあって、大体がお稽古事などの集まりの場として借りているだけで、運営に積極的に関わろうという意識も高まらないのが現状のようだ。
 思えば「主婦は仕事か」という「主婦論争」が世間をにぎわしたのは、一昔も二昔も前のことである。「ウーマンリブ」とか「フェミニズム」とかいう言葉も今は余り聞かれなくなった。「ジェンダー」っていう言葉だって、若い世代には「何それ?」ってなもんじゃないだろうか。
 会議に出席しているのは殆どが中高年の女性たちである。彼女たちは(かくいう私もその一人だが)、一様に声高でエネルギッシュだ。多分経済的にも恵まれているのだろう。何年も地域活動をしてきたという自負も大きい。「次世代へのバトンタッチ」というのは命題だが、肝心の「次世代」の若者たちはなりを潜めている。
 CSNからは私の他に二人の若い男性メンバーが出席した。「若い女性」も殆どいないこういう席では、「若い男性」の存在は異色中の異色である。しかし、若い世代を引きつけられないような活動は、そのうちに衰退してしまう。彼らの発言がこういう場でどう受け止められていくのかを見るのは興味深い。
 そのうちの一人であるUさんは、「こういう活動には若者に対する視点が欠けている」と発言した。渋谷には様々な若者たちが集まってくる。漫画喫茶を泊まり歩くホームレス寸前の若年者も増えているという。彼らにとっては、「男女平等」より「明日の糧」の方が切実な問題だろう。区長は「コンサートなどの発表の場や集う場をつくるなど、区としても色々な手建てを考えている」というようなことを答えていたが、果たしてどこまで有効なのだろうか。
 日々若い人たちの様々な課題に接している身としては、今あちこちで叫ばれている「男女共同参画」というテーマは、どこか上滑りして「テーマのためのテーマ」という感じがしてしまう、というのが正直なところだ。「結婚」「子育て」「介護」などは、相も変わらぬ古くて新しい女性問題である。しかし今新たに生まれている「シングル女性たちの生き方」というテーマはまだ「女性問題」としての地位を獲得してはいないように思える。
 結婚の保守性から逃れ、「男女平等」の理念のもとで社会での自己実現を目指した若いシングル女性たちは、段々に先の見えない不安と疲労に苛まれ始めている。
そしてこれはそのまま「シングル男性」の問題としても敷衍する。「男女共同参画」というテーマではくくりきれない根深い何かが、じわじわと進行している。この課題をどう活動に結びつけていくのか、「地域」「行政」というキーワードをどう活用していくのか、女性センターの未来とCSNの未来は果たしてリンクすることができるのか、そんなことを考えつつ、また明日の会議にも出席してこようと思っている。
 
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