「正解」はないけれど…

 昨日は福生の青少年自立援助センターで
文化祭をやるというので、CSNメンバーとともに
遊びに行ってきました。
 ここは、現在私と男Nが東京都の青少年支援事業
の一つである「訪問支援員養成講座」(こちらを参照)
を受けているところです。第1回目の講座の折に今日
の案内があり、かの斎藤環医師がお越しになるとの
ことだったので、興味津々、勇んで出かけて参りました。
 斎藤先生はこのセンターの工藤理事長と親交が
あるようで、この日は午後から氏による「NPO法人
設立10周年記念講演」と、工藤理事長との「記念
ディスカッション」いうイベントが組まれていました。
 斎藤先生はよくメディアにもご登場なさいますが、
ナマ斎藤は何年か前の精神保健セミナーでの講演
以来久しぶりです。それもいつも何百人かの聴衆
越しに遠く拝見するだけだったので、今回のように
間近でお目にかかれ、その上懇親会で言葉まで
交わすことができたのは、何とも嬉しいことでした。
 この日の先生の講演は主に「引きこもりの今後」と
いうような内容でした。「引きこもり」の若者たちが
徐々に高齢化しつつあり、それにつれて親のほうも
老齢化して、今までのように彼らを養っていけなく
なっている。あと何年かすればかなりの数に上る
そうした人たちを国が養わざるを得なくなるだろう。
そのときにはきっと世論のバッシングが起きるだろう、
というものです。
 これを先生は「2030年問題」と名づけていましたが、
それではその問題にどう対処するのか、というところで
工藤氏と意見を異にする、ともおっしゃってました。
そのあたりは、この後行われた両氏の「ディスカッション」
でも垣間見られました。
081026hussa1.jpg
 
 斎藤先生は「できるだけ親のすねを食い延ばす
方法を講じていこう」という提言をしていらっしゃる
ようで、ご自分のシンポジュームにフィナンシャル
プランナーを呼んで、具体的な資産の計算まで
してもらうとのことです。それに対して工藤氏の方は、
一人でも多くの引きこもりを自立させようと奮闘して
いる。精神科医とNPO理事長という立場の違い以上に
そのスタンスの違いは大きいように思えました。
 このスタンスの違いはどこからくるかというと、
やはり斎藤先生は「自発性に勝るものなし」という
思いを強く持っていて、「本人の意思ができるまで
待つのが大事」というのに対して、工藤氏は「待って
いたってどうにもならない。力を貸してでもそれを
引き出してやるのが最も効果的だ」という経験的信念
を固持しているところでしょう。
 といっても、両氏が口角泡を飛ばして喧々諤々
論じ合ったわけではありません。口角泡を飛ばして
いたのは専ら工藤氏の方で、斎藤先生は時折
ぼそぼそと口を差し挟むだけ、といった態で、あまり
「ディスカッション」という感じはありませんでした。
 質疑応答の時間に、「出てこないならこちらから
行くという考え方には違和感を感じる。斎藤先生が
おっしゃたように『待つ』というのも大事なんじゃ
ないか」と私が質問したときも、工藤氏はすごい
勢いで反論してこられました。いやぁ、これじゃ
斎藤先生が真っ向から立ち向かおうとしないのも
むべなるかな・・・という感じでした。
 この「ディスカッション」に引き続き行われた懇親会
では、「怖い」としり込みする男Nを引っ張って、工藤氏
の前に座り、再チャレンジしてみました。いみじくも
斎藤先生が講演中に讃えておられたように、「人が
死ななきゃ金を出そうとしない国から、これといった
事件もなしに予算を分捕る手腕」と、それを持つに
至るまでの膨大な闘いの道のりを感じさせるその
自信に満ちた語り口には、私の細々としたこだわりなど
吹き散らされてしまいそうな勢いがありました。
081026hussa2.jpg
 
 因みにかの「育て上げネット」の統帥、工藤啓氏は
ご子息とのこと。「あいつは反面教師」とかおっしゃり
ながら、親子揃って億単位の金が回るNPOを統率し、
国の施策を動かすその手腕とエネルギーには脱帽と
いうしかありません。
 今週末は男Nとともに「訪問支援員」の合宿研修
で、このセンターに泊り込みます。「違和感」は消えぬ
ままでの研修になりそうですが、吹けば飛ぶよな
小船の船頭としては、「胸を借りる」つもりで、楽しく
学んで来るつもりです。
blogranking.gif
ブログランキング・にほんブログ村へ
↑ブログを読んだらクリックしてね!
 

カテゴリー

投稿の月