特別控除廃止が問うこと

13日、厚生労働省は生活保護の「特別控除」を8月から廃止することとした。
この特別控除は生活保護支給区分の就労控除にあたり、
その月の給与収入に対する「基礎控除」のほか、
受給者の勤労必要経費に対する「特別控除」がある。
前回私が就労した際にも特別控除が適用され、
昼食代、衣服の消耗が激しくなるための衣服費代、
社内での交際費代といった、働くうえでかかるだろう費用を指すと
ケースワーカーが言っていた。
いわば、数千円の小遣いといった意味合いだ。
就労控除にはそのほか、
通勤交通費や社会保険料が控除される「必要経費控除」や、
新規で就労した場合に半年間控除適用となる「新規就労控除」がある。
基礎控除、特別控除、必要経費控除は本来の控除の意味とは違う解釈で、
しかも同じ言葉の括りになっていることが理解のしにくさを生んだ。
就労中は、その控除の適用や算出方法の難解さに頭を悩ませた。
給与申告をすると決定通知書が送られてくるのだが、
毎回内訳が異なるためどのような根拠でこの支給額が算出されたのか、
よくケースワーカーへ連絡をしていた。
今回、特別控除廃止の理由として、制度がわかりづらい、効果が上げにくい、
そもそも適用していないといった、各自治体の声が上がっているそうだ。
私同様、それだけわかりにくいことなのだ。
しかし運用問題、効果の検証もなく廃止というのは、いかにも早急すぎる。
私は特別控除廃止の陰に、保護費予算切り詰めの序段を思った。
特別控除廃止後は、その控除分を基礎控除に上乗せして拡充させるという。
そのために全額控除される収入額の引き上げや、控除率の統一、
上限額の撤廃などを実施する方針らしい。
特別控除は、基礎控除と別立ての控除であるから明確に加算しなくてはならない。
そのため、必然的に支給額全体の額は増える。
そこで、特別控除を廃止にして基礎控除に上乗せしてしまえば、
基礎控除ひとつの中でいかようにも調整ができる。
そうすれば、特別控除分を抜きにした保護費全体の引き下げを達成できるという
カラクリにつながるのではないかと考える。
基礎控除への上乗せは現段階での案であって、
まずは廃止にしてしまうという政治判断自体が大きな懸念材料だ。
特別控除の支給目的には、勤労意欲の向上を掲げている。
仮に勤労意欲が上記のケースワーカーの説明が本来の意味なら、
意欲向上にはなりにくい。
昼食は生活扶助の側面、衣服は減価償却のようなものだからだ。
もし本来の特別控除の理念を叶えるのなら、
その代替案を討議し制度化したのちに廃止にすればよい。
だが早急に廃止というのは、いかに保護費が逼迫している象徴のように見える。
勤労意欲向上を目指すのなら、
就労をしても安定した暮らしを送れることが保障されてはじめて、
勤労意欲が出るというものではないだろうか。
就労を目指す生活保護受給者には、
生活保護を受けなくてならない事情が前提にあるということ。
就労を目指す生活保護受給者の中には、就労しても収入面でのハンデが大きい。
わずかな特別控除でさえ暮らしの支えになるのなら、
安易に廃止へ流れたこの件は、
本当に勤労したいと思う受給者が今後増えるのか疑問に思う。
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