東京は広いのか狭いのか、
なんて地理的なことを考えるより、
過去に好きなった人との関わりのある街を基準にすると、
情緒的な感覚を持って狭いなと感じてしまう。
このあいだ、CSNの会合で鷺ノ宮へ出かけた。
鷺ノ宮へ行くには、自分の住んでいるところから、
とある街を乗り換えがてら通過しなくてはならない。
その街は、野方。
今から5年前、好きになった人が住んでいた街だ。
彼とは、わずか2ヶ月で破綻した。
付き合った訳ではないので、破綻もなにもないのだけど。
彼の外見は背が高くスラッとし、話し方は大人っぽいのに、
時々見せる無邪気さが、自分の理想そのものだった。
彼に会える週末は会いたくて会いたくて、
会う約束のメールをするだけでも「ドキドキ」した。
メールの文章からも、彼の香りがしていた。
金曜日、夜を過ごすのは大抵彼の家で、
ただ二人でテレビを見ているだけだったけど、
自分はずっと緊張していた。
翌日は遅いランチを野方駅周辺でとり、
夕方帰るというのが基本だった。
彼への想いというのは、今思うとかなりの転移があり、
そのウワッとくる感じは自分なりの恋するパターンだった。
でもそんなことを知らない当時は彼に夢中で、
仕事も上の空になり、平日のどうでもいい時間にメール確認したりと、
かなり入れこんでいた感じだった。
しかし終わりというのか、彼との関係を清算を見据えた感じで終えた。
最後に彼の家に行った日、その日は初めて二人で飲みにいった。
ここは一つ、素の自分を出してみよう。
彼はどう反応するのか。
それで好きになってもらえたらいいのになぁなんて、、、
それは自分の「これでもか。。。」だった。
振りつけでカラオケをし、ぎゃ-ぎゃ-騒ぎ、、、
でもどこか楽しめない感があった。
そして彼の家へ向かったのだが、
素の自分がどうとかこうとかは何も言われていないのに、
彼のどんな反応にも恐怖を感じた。
その夜、眠れなかった。
そんな自分の想いを抑え切れず、
自分は彼が寝ている間にメモを残し、帰った。
「もし付き合えるなら、夕方メールください、メールがなかったら、
これで最後にします」
恋の盲目さ、ここにありといった感じで、
恋愛ドラマ並のことも、自分には大きな決断と勇気がいった。
野方駅前の踏み切りで電車の通過待ちをしていると、
彼からメールではなく、携帯電話が鳴った。
あれ、なんだろう、電話に出るべきか出ないべきか。。
どうしようなんの返事だろう。。
電車の通過待ちのわずかな間、とても長く感じた。
自分は電話に出なかった。留守電も入ってなかった。
そして駅のホームで、自分は泣いた。
彼の言いたかったことは、今だわからない。
彼の返事を聞くのが、非常に恐かった。
妄想が支配し、別に彼がそのあと何かしたわけではない。
このあと、サンプラ相談室に行けなくなった。
なぜなら、サンプラの最寄中野駅から「野方」ゆきのバスが出ていて、
その字を見るだけで、ダメだった。
あれから5年、そんな野方の街を歩いた。
彼と食事をした店、あの踏み切り、人目はばからず泣いたホーム、
おりしも時間は、あの頃きまって帰った夕方。
あの頃とは変化のあった自分、
懐かしさとともに、あの頃の自分に投げかける言葉もなく、
胸をキュンとさせていた。
違ったのは、あの頃と別方面の電車に乗ったことくらい。
今、野方と同じ中野区に住み、暮らしている。
でもこの街は、どこか同じ区でありながら、別のような気がしている。
そんな思い入れのある街は、東京にたくさんあるけど、
胸キュンと隣合ってる東京も、好きです。
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